1. はじめに
私立学校の学校教員・教師・先生の専任教諭(正社員)をめざしている場合、いきなり専任教諭になれる場合もありますが、まずは非常勤講師として勤務し、指導経験を積む手段もあります。
時間講師ともいわれる非常勤講師はどのような働き方をするのでしょうか。
今回は、非常勤講師の働き方と、働くうえでの留意点・おさえておくべき点についてご紹介します。
2. 私立学校の非常勤講師の働き方・役割
では具体的に私立学校の非常勤講師の働き方・役割についてみていきましょう。
非常勤講師の働き方
非常勤講師は「時間講師」とも言われ、基本的な仕事内容は担当クラスの授業を行なうことです。
授業以外では、小テストや定期試験などの作成・その採点、成績処理がおもな仕事内容となります。
私立学校の非常勤講師は月給制を採っているところがほとんどで、上記の仕事内容の対価として給与が支払われることになるのです。
夏休み・冬休み・春休みのような長期休暇で授業がない場合でも、毎月同じ金額の給与が振り込まれるのが一般的ですし、長期休暇中は出勤しなくてもいいという体制を採っているところがほとんどです。
長期休暇中以外では、学校行事で授業がない場合も、非常勤講師は出勤しなくてもいいというところがほとんどでしょう。
しかし私立学校によっては、長期休暇中や学校行事がある場合でも、本来授業がある時間帯は出勤するように言ってくる学校もあるので、勤務時間については各私立学校に確認する必要があります。
生徒目線では非常勤講師も「先生」
忘れてはいけないのは、生徒は非常勤講師であっても、専任教諭と同じように教員・教師という目線でみていること。
つまり生徒にとって雇用のされ方に関係なく、教員・教師・先生・非常勤講師はみんな同じ立場なのです。
非常勤講師だからといって授業や授業にまつわる業務を進めるだけでなく、教員・教師・先生として生徒と接する必要があります。
勤務校の教育理念・方針を理解し、子どもをきちんと育てるのも非常勤講師の役割です。
勤務時間外でも積極的に生徒と接したり、学習の質問を解決する行動が、教師としての経験値向上につながります。
3. 私立学校の非常勤講師としての留意点・おさえておくべき点
前述のように非常勤講師は授業担当を中心としていますが、仕事を進めておくうえでの留意点・おさえておくべき点についてご紹介します。
授業関係
まず非常勤講師のおもな仕事である授業関係についてみていきましょう。
授業力向上を図る
学校の教員・教師・先生・非常勤講師は、生徒の基礎学力の定着を図るのは当然のことですが、単に学力を身につけさせるような教育は学校教育とはいえません。
いいかえると、教科書「を」教えるような学習指導していてはいけないのです。
もし教材の内容「を」教える学習指導だけでよければ、塾・予備校・オンライン授業で十分まかなえます。
今求められる授業力は、学習内容をもとに、生徒に問題点や課題点を発見させたり、その解決策を考えさせることです。
そして他者と議論したり意見を交わし合い、自分の意見・考えを伝えるだけでなく、他者の意見・考えをしっかりと聞き入れ、総合的に新たな視点を見つけたりすることが求められています。
つまり以前に見受けられた教員・教師・先生・非常勤講師が生徒に対して、一方的に知識・教養を詰め込むような学習指導では生徒の内面的な成長につながらないのです。
教員・教師・先生・非常勤講師が双方向のやり取りをする授業、生徒同士でやり取りする授業を展開することで、一旦身についた基礎学力が離れにくくなります。
そのような授業を展開するためには、教科書や参考書の内容を予習するような授業準備だけでは不十分すぎます。
生徒を活動させるための授業を展開するためには、十分な授業シミュレーションが必要ですし、教員・教師・先生・非常勤講師が幅広い視野をもっていなければ生徒を活動させる授業展開はできません。
教員・教師・先生・非常勤講師は、他の先生が展開している授業を参考にしたり、他校との先生からの情報を手に入れる、自分自身で教育以外の分野にも視野をあてるなどして、人間経験値を上げることで生徒の内面までも成長させる授業展開が実現できるでしょう。
とくに人脈が少ない教員・教師・先生・非常勤講師は、勤務校だけでなく他校の先生とのつながりを広げていくことをおすすめします。
生徒を授業に参加させる
学校にはさまざまな生徒が通っています。
生徒も人間ですので気持ちの浮き沈みもあるでしょうし、授業中に寝てしまう生徒、授業に関係のないことをする生徒、周りと私語をする生徒もいるかもしれません。
生徒が授業に参加していないのは、生徒自身の問題と受け取られる場合もありますが、それだけでなく自分の授業展開に問題がないのかを、もう一度見つめ直すことも必要です。
人間は問題が起きたときに、すぐに他者へベクトルを向けますが、その前に自分へベクトルを向ける必要があると考えます。
もちろん居眠り・私語・内職をしている生徒がいた場合は、生徒へ声かけする必要がありますし、声かけを複数回行なっているのにも関わらず改善されない場合は、授業外で生徒と個別に話しをする、それでも改善が難しい場合は、担任・学年の担任団・保護者と連携を図りましょう。
自分一人で抱え込む必要はありません。
欠席者のフォロー
中学生・高校生は思春期真っ只中であるため、精神的に不安定な生徒もいます。
中には学校へ行くことが難しくて長期欠席になる生徒もいるのです。
長期欠席者を含め、病気等で授業を欠席した生徒がいた場合、教員・教師・先生・非常勤講師は授業時に配布した教材を確実に欠席者のもとへ届ける必要があります。
学校によっては欠席者の机の中に配布教材を入れておくというところもありますが、私はおすすめできません。
なぜなら他の生徒が配布教材を失くしたときに、欠席生徒の机の中から無断で教材を持ち出すということがあったからです。
私は欠席者の配布教材は、教材に生徒の名前を書いた上で担任に渡すようにしていました。
また長期欠席者の配布教材については、担任が生徒の自宅へ郵送する方法を採っている場合がありますので、配布教材は担任に渡すことをおすすめします(←担任業務が増えるなんて思ってはいけません)。
Google classroomやロイロノートなど、ICTが整備されている学校については、生徒に教材を配信するだけで確実に手元へ届きますので、担任から欠席生徒に配信されたデータを確認するよう伝えてもらいましょう。
定期試験
では次に定期試験についてみていきます。
定期試験の作成
非常勤講師であっても定期試験の作成をする必要があります。
試験実施1週間前には試験範囲を発表し、その試験範囲に基づいて定期試験を作成しましょう。
多くの学校では受験者全体の平均点が60点程度になるよう試験を作成するよう促されます。
定期試験が学校の生徒の実力に合わせて作成されますので、基本問題を中心にするのか、応用問題を中心にするのかを見極めなければなりません。
作成した試験が実施されている時間は、各クラスを巡回するのが基本です。
試験時間が50分の場合は、試験開始後25分後以降に全クラスを巡回できるように計算しなければなりません。
巡回する理由は、問題に不備がないか、問題用紙・解答用紙に誤りがないかを確認するためです。
もし誤りや訂正があった場合は、速やかに全クラスに伝達しなければなりません。
試験を印刷する前に、作成した定期試験に問題や不備がないかを十分にチェックし、円滑に試験が実施されるように努める必要があるのです。
定期試験の採点
実施された定期試験が自分の手元に戻ってくれば採点作業を行ないます。
最近では採点ソフトがありますので、採点をAIに任せることも可能です。
自分の手で採点する場合は、まず配点が正しいか、合計点数が100点満点になっているかを確認しましょう。
採点は正確に行なうことはいうまでもありませんし、別解が考えられる場合は、より採点に気をつけなければなりません。
私は普段の授業時に「漢字表記でなければ不正解」や、「バラク=オバマ」のように「=」が必要なところは「=」をつけることといった、表記に関してはあらかじめ生徒に伝えておくと、自分が採点するときに採点基準を統一することができます。
生徒に答案を返却するときは模範解答を渡す必要がありますので、採点後に準備しておきましょう。
定期試験の返却
定期試験を生徒に返却する前に、生徒には模範解答を配布する必要があります。
模範解答を見ながら教員・教師・先生・非常勤講師の採点に誤りがないかを確認させるためです。
模範解答配布後は、採点基準などについての補足を加えてから生徒に答案を返却します。
答案返却時は、自分の答案を不正に書き換えさせないために、筆記用具以外は出させない、筆記用具は赤ペンにのみといった環境をつくることも大切です。
私は採点した答案を全員分スキャンして、成績が確定されるまで保管していました。
もし採点に訂正がある場合は、答案返却後にその場で訂正を受け付けましょう。
生徒が採点ミスのチェックを終えたころに「訂正はありませんか?」と聞き、訂正がないようであれば「ではこれ以降訂正は受け付けません」とはっきり伝えたうえで返却を行なうといいです。
定期試験を受験しなかった生徒がいた場合は、基本的に各学校で見込点の算出の仕方が決まっていますので、それに従って成績を算出します。
また試験は受験したものの、答案返却時に欠席している生徒がいる場合は、教員・教師・先生・非常勤講師が欠席者の答案の採点ミスがないかを再確認し、問題なければ自分で当該生徒に答案を返却するか、担任から答案を返却してもらいましょう。
生徒指導関係
非常勤講師は授業担当だけでなく、ときには生徒へ生活面における指導を行なう必要があります。
生徒への声かけの注意点
前述のように授業に参加しない生徒がいたり、学校生活で改善点が見受けられる生徒がいる場合、昔のようにやみくもに叱りつけるような指導は、生徒にとって何のプラスにもなりません。
生徒によっては叱られ慣れている生徒、怒鳴られることに慣れている生徒もいますので、そのような生徒にとって叱りつけるような指導は右から左に流れています。
教員・教師・先生・非常勤講師は、生徒指導を短時間で終結させようと思ってはいけないと考えます。
例えば、授業中に生徒が私語をしている場合は「静かにしなさい!」と注意するよりかは「今は何の時間かな?何をする時間かな?」と生徒に問いかけて考えさせ、答えさせるほうが効果的です。
授業と同じで、教員・教師・先生・非常勤講師が一方的に指導しても生徒には入りませんので、生徒と時間をかけてコミュニケーションを図ることが、良い方向に生徒を成長させることができます。
前述と同様に、教員・教師・先生・非常勤講師が一人で問題を抱え込まず、担任・学年の担任団・保護者と連携を図ってください。
4. まとめ
今回は、非常勤講師の働き方と、働くうえでの留意点・おさえておくべき点についてご紹介しました。
非常勤講師の仕事内容をご理解していただけたと思いますが、忘れてはならないことは非常勤講師であっても、生徒からしたら専任教諭と同じ「先生」です。
授業担当がおもな仕事になりますが、授業時間以外でも積極的に生徒とコミュニケーションをとり、信頼関係を築いたほうが、より実のある授業展開ができますし、生徒を人間として成長させることができるでしょう。
非常勤講師の役割について、気づいた点があれば追記・更新していきます。
今回の記事を参考に、これから教員・教師・先生・非常勤講師をめざす方は、ぜひ記事の内容を参考にしてください。
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