減らない児童虐待…背景として考えられることとは??

志学舎

1. はじめに

最近連日児童虐待のニュースを目にします。

同じ内容の事件が報道されているかと思いきや、異なる事件について報道されていることに驚きを隠せません。

なぜ国内で児童虐待は減らないのか。

今回は児童虐待が減らない背景について考えてみましょう。

2. 増える児童虐待件数

2017年の全国の児童相談所で受けている「児童虐待相談対応件数」が、13万3778件(前年度比1万1203件増)となり、統計を取り始めた1990年度から27年連続で増加しています。

どのような虐待が行なわれているのか、内訳は以下の通りです。

内容 件数 割合
心理的虐待 72,197 54.0%
身体的虐待 32,223 24.1%
ネグレクト 26,818 20.0%
性的虐待 1,540 1.2%

心理的虐待とは、子どもの前で保護者がパートナーに対して暴力をふるう「面前DV」や、暴言を浴びせるなどの行為をさします。

その一例として「お前なんて生まれてこなくてよかった」と、保護者が子どもに言うケースがあります。

またネグレクトとは、養育の放棄・怠慢のことをいうのです。

2016年度の虐待による死亡人数(心中以外)は49人で、死亡した子どもの年齢は0歳児が32人と最も多く高い割合で、その中でも月齢「0か月」が16人でした。

主たる加害者は実母が最も多い30人で、全体の61%を占めているそうです。

これらのデータを見て、ショックを受けた方も少なくないでしょう。

国内では、大阪府が児童虐待件数が最も多いという統計もあります。

3. 児童虐待件数が減らない理由・背景は??

先ほどお示ししたように、国内の児童虐待件数が減らないのは、どのような理由・背景があるのか考えていきましょう。

日本は児童虐待に関する法整備が不十分

児童虐待について他国と比較したいところですが、国ごとで虐待の定義が異なりますので比較は難しいところです。

しかし日本は、児童虐待に関する法整備が不十分であるという指摘が挙げられています。

中学・高校の社会科の授業で、国際連合の授業を受けた記憶は残っていますか??

国連は世界平和を実現するために人権擁護に努めている組織で、さまざまな条約を採択している機関です。

国連で採択された条約を批准(適用)するしないは、それぞれの国に判断が委ねられています。

例えば日本は、1990年に国連が発行した「子どもの権利条約」の批准国で、1994年5月22日から国内でその効力を発揮しています。

効力が発揮しているということは、子どもの権利条約に基づいて、子どもの権利を守るための法律を制定するのが通例です。

2019年に入ってから、国連は子どもの権利条約批准国の日本を調査した結果、確かに児童虐待防止法が制定されていますが、家庭内暴力に対する法整備などが不十分だという見解を示しました。

何もかも法律で規制するのは良くないという考え方がありますが、第三者に危害を加える児童虐待については、厳罰を含めた法整備が必要だと思いませんか??

2019年1~2月現在に報道された児童虐待の報道

2019年に入ってから1ヶ月あまりですが、児童虐待に関する事件が連日報道されています。

千葉県野田市で発生した児童虐待

小学生の女子児童(10)が、小学校で実施されたアンケートで、父親から虐待を受けていると申告があったことで事件が発覚。

女子児童は、一旦は児童相談所に保護されましたが、その後、児童相談所所長は所内の会議で、女子児童を帰宅させると危険リスクが高いのにも関わらず帰宅させ、その後女子児童は親戚方に住むも、結果的には女子児童は死亡するに至りました。

事件の解明が進められていますが、司法解剖の結果、肺に水がたまっていることまで発覚し、日々相当な虐待を受けていることが明るみになってきています。

当時の児童相談所所長は、記者会見で「当時の会議の記録がない」と説明しながらも、実は会議の記録があるなど、女子児童の命を軽視しているとしか思えない状態も発生しているのです。

大阪市東淀川区で発生した児童虐待

当時2歳の女児に対して、頭に何かしらの衝撃を与えて死亡させた事件。

遺体には、硬膜下血腫・くも膜下出血の症状がみられ、日常的に虐待が行なわれていたことがうかがえます。

さらに、女児に対しての性的暴行が疑われることも発覚しました。

なぜ児童虐待が減らないのか??

児童虐待が減らない理由は、さまざまな見解があります。

先ほどの法整備の不十分さ以外に考えられることを見ていきましょう。

連れ子が標的になっている

児童虐待を受けている子で多く見られるのは、連れ子が標的になっていることです。

連れ子がいることを分かっていながら、パートナーと付き合い、付き合っているときは楽しくて結婚まで考える。

そして最初はうまく生活できていますが、時間が経つにつれ、やはり連れ子のことを愛すことができず虐待に及んでしまうのです。

先ほどご紹介した千葉県野田市の事件のように、実の子であっても虐待を受けている今、自分の実の子ではない連れ子への虐待が目立ちます。

社会環境の悪化が虐待を生む

2019年現在、景気は回復傾向にあり、この景気回復は2020年の東京五輪まで続くと予想されています。

2019年10月に消費税が10%に引き上げられ、景気回復が伸び悩むとされていますが、それでも景気は回復し続けるそうです。

とはいっても、あなたは景気が回復している実感はありますか??

ものやサービスは前以上に売れていますか?

売り上げ、利益、給料、ボーナスは上がりましたか?

景気がよくなるということは、売り上げ、利益、給料、ボーナスが上がったとしても、それに比例して物価も高くなりますので、一向に生活が楽になった気はしないのです。

それに加えて税金や保険料が上がるとなると、より生活は楽になりません。

社会人は一生懸命働いて、やっと生活ができる程度。

機械化がすすむと、今後は雇用される数が減り、リストラされる数は増えます。

自分1人が生きていくのが精一杯。

そのようなキャパシティを超えた生活・焦りからストレスが生み出され、矛先が子どもへ向けられると虐待が発生するのです。

国内の離婚率が増えているのも、社会環境の悪化が原因といえます。

自分が幼少期に虐待を受けていた

自分が育った環境で保護者から暴力を受けた場合、自分がいざ保護者になったときに同じように力で子どもを教育しようとする傾向も、児童虐待が発生する要因の1つです。

しかし自分が虐待を受けて育ってきたからといって、それを自分の子どもに行なうのは間違っています。

自分が虐待を受けたとき、どのような気持ちでしたか?苦痛だったはずですよね??

虐待を受けた経験があるのであれば、その痛みはあなたが一番分かっているはず。

同じ気持ちを子どもに与えてはいけません。

児童虐待を社会環境のせいにしてはいけない

先ほどは社会環境の悪化が児童虐待を生む要因になっているとお伝えしましたが、だからといって子ども虐待することは許されません。

社会人だからこそ、保護者だからこそ、子どもを守るのが当たり前です。

保護者は社会環境が悪くても、それを理解しながら子どもをつくり、育てようと決意したはずです。

それゆえ、社会環境から生まれたストレスを子どもに向けるなんて論外です。

ストレスが自分の中でうまく処理できないほど、ストレスがたまっているでしょうし、働いていてもうまくいかないときもあるでしょう。

しかしそれを乗り越えないといけないのが、社会人であり保護者なのです。

大切なかけがえのない唯一の子ども傷つけることは絶対にやめてください。

子どもには保護者であるあなたしかいないのです。

子どもは親を選んで生まれてきたわけではないのです。

子どもの顔をみてください。

子どもの顔を触ってください。

子どもの胸に軽く手をあてて、子どもの心臓の鼓動を感じてください。

子どものぬくもりをあなたが感じて、あなたのぬくもりを子どもに感じさせてください。

もう一度いいます。

子どもには保護者であるあなたしかいないのです。

4. まとめ

今回は児童虐待が減らない背景について考えてみました。

虐待が減らない背景にはさまざまなものがありましたが、何よりも忘れてはいけないのは、子どもにとって頼れる存在は保護者だけだということです。

保護者である以上、どれだけ社会環境が悪くても、社会人であるあなたがその荒波を乗り越えて子ども育てていかなければいけません。

景気が回復していると言われいますが、私たちにはその実感はあまりありませんし、そこからストレスを感じているでしょう。

まずはあなたが貯めているストレスを、誰かと話したり、遊んだりして発散してください。

そうでないと虐待を生む可能性が高くなりますし、それ以前にあなたがストレスにやられてしまっては子どもを育てることもできなくなります。

どんな理由があれ、子どもに対する虐待は絶対にだめですし、許されることではありません。

厳しい社会環境ですが、子どものことを最優先にしてほしいものです。

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